インペリアル・カレッジ・ロンドンやフロリダ国際大学の研究チームはbioRxivにて一つの可能性を発表しました。
研究チームは蛾やトンボ等の昆虫が光源周辺を飛行する様子を高速カメラで撮影し、飛行パターンを観察しました。すると3つの飛行パターンを示していることが分かりました。
1.横から光を受けると光源の周囲を旋回続ける行動(図1)
2.上から光を受けると急上昇し、すぐに失速する行動(図2)
3.下から光を受けるとひっくり返った状態になり、光源に背を向け失速して墜落する行動(図3)
図1
図2
図3
3つの飛行パターンで共通しているのは、昆虫は常に光源に背中を向けていることでした。このような習性は背光反射(Dorsal Light Response)と呼ばれています。背光反射とは昆虫や魚類で観察される姿勢制御機能です。光源に背中側を向けようとする反射的な行動とされています。
特に小型の昆虫にとって重力を感知して上下を認識することは困難です。そこで重力とは逆方向からの光を感知することで、正しい姿勢を取ることができます。
研究チームはこれらの結果から以下の結論を導き出しました。
昆虫は光源へ近づくことで背光反射を引き起こし、光源への急上昇や墜落を示している様子が我々にとっては光源に突撃しているように見えているだろうと結論しました。
背光反射は昔から知られていましたが、光が昆虫を拘束し続ける原因であると示唆したのはこの研究が初めてです。背光反射を示さない昆虫もいることから、今後の研究次第では光で害虫を誘引し、一斉に駆除することができるかもしれません。しかし、光によって貴重な昆虫種の減少にもつながる可能性(光害)があります。
昆虫と光に関してはまだまだ未解明な部分はたくさんあります。今回はその一端が解明されたに過ぎません。今後の研究に期待していきたいです。
参考文献
〇Fabian, S. T., Sondhi, Y., Allen, P., Theobald, J. C., & Lin, H. T. (2023). Why flying insects gather at artificial light. bioRxiv, 2023-04.